キリムの話

もっと知りたい、キリムの話

1、キリムとは?

キリムとは、平織りの敷物のことをさします。イラン・トルコ・アフガニスタンのかけての地域が世界最大のキリム生産国です。「鶴の恩返し」にでてくるはた 織り機、縦に糸が張ってあり、そこに横糸を交わらせる様にして布を織っていきます。これが平織り。 なので絨毯のように毛足がありません。

糸を縦と横に絡ませるというシンプルな発想は、人類の最も原始的な布の作り方であり、キリムの歴史は絨毯よりもはるかに古く、またアフリカ・南米・アメリカ原住民など世界各地で平織りの敷物は織られています。

イランでは、キリムを「ギリム」と発音します。イランのキリムは、昔々、移動して生活する遊牧民が敷物、テント、穀物や家財を入れる袋などの目的で、自然発生的にうみ出されました。生活の用具として各家庭で自分たちが使うために織られてきたのです。

キリムの素材は、ウールが主流ですが、ヤギ・ラクダ・コットン・シルクなどもあります。

キリムは、「軽い・携帯しやすい・丈夫」が特徴ですが、まさに遊牧民にとってピッタリの特性を持っているのです。

2、キリムのテクニック(織り方)

ペルシャキリムの素晴らしい点は、織りに関して、実に様々な技法を持つ点です。

ベーシックな平織り
キリムの基本となる織り方で、トルコなど他国のキリムはほとんどがこの技法で織られています。織機に張った縦糸に水平に横糸を交差させるようにして織ってゆく。木や鉄のクシで横糸の織目を詰めながら織り進みます。

曲線織り
イランだけの技法です。普通は縦糸に対して横糸を水平に通していきますが、これに角度をつけて、縦糸の隙間に別の糸を差し込んで模様を織り込みます。差し込んだ部分の周りはカーブを描くように滑らかな曲線模様に仕上がります。

スマック織り
地となる平織りの織地に、別の横糸をぐるぐると巻き込むように絡めて織り込んでいきます。縦糸2本に1目が基本です。二重に平織りより丈夫で、モチーフのバリエーションも豊富です。

ジジム(ジャジム)織り
平織りの織地に、別の糸で刺繍のように模様を入れたもの。織り進めながら別糸を入れていくので、刺繍とは少し方法が違います。

3、ペルシャキリムの特徴


華やかなバラのキリム(ビジャー産)

イラン人は、絨毯がないと生きていけないと言っても大げさでないくらい絨毯が好きです。家中どの部屋にもたいてい絨毯が敷いてあります。イラン国内での注 目はほとんど絨毯にあるため、キリムはあまり注目されていないようです。また、ヨーロッパを中心に海外でもペルシャ絨毯の方が断然人気がありますし、ペル シャ絨毯・キリムを海外に販売するペルシャ商人も絨毯のほうに力を入れています。というわけでペルシャキリムの特徴として、まず「商用化(外貨獲得が目 的)されすぎていない。」という点が挙げられます。この点ではお隣の国トルコは、現在最大のキリム生産国ですが、外貨獲得の手段を目的として織られている ことと大きく異なります。

そのため、デザインやモチーフなども産地ごとに特徴を色濃く残して現在に伝えられておりますので、キリムの特徴から○○あたりで織られたものということが判断できます。

また、イランという国自体のライフスタイルがいまだに昔ながらを残していますので、キリムの製法も比較的伝統製法をとどめているのも特色です。

価格の面では貨幣価値を考慮すると、日本では同等のグレードのトルコキリムと比べて安く購入することが出来ます。

安価なものは別として、ペルシャ絨毯と並んで、長い伝統に裏打ちされた確かな技術は現在に脈々と受け継がれていて、その芸術性の高さ、質の良さは世界一と言われています。

4、イラン主要都市とキリムの産地

【主な産地とその特徴】

■シラズ地方(カシュガイ)
穏やかな気候のせいか、赤・青・緑・黄色・白・ピンクなどのカラフルな色を組み合わせたキリムが織られます。ひし形や三角形かぎ形などの幾何学模様の文様が多のも特徴。カシュガイとは部族の名前でギャッベ絨毯も織っています。

■グーチャン地方
イラン東北部トルクメン族の織るキリムは、ナチュラルなベージュを基調とした素朴な印象が多いです。部族や家の紋章をあらわす文様のほか、草花や動物などのモチーフも使われます。グーチャンはイランの地方都市マシュハド近郊の街でマシュハドでは絨毯の生産も盛んです。

■シルジャン地方
極細の織糸を使い、まるで針で刺繍したかのような非常に細かなキリムを織ります。モチーフは幾何学模様や動物などの連続柄が多く、赤、茶、濃紺などの重厚な色が使われます。

■サナンダジ地方(セネ・ビジャー)
トルコとイラクの国境付近にはクルド族が住んでいます。連続した花(特に薔薇)の模様や動物柄が多く、赤が印象的なポイントの色に使われます。また絨毯の生産も盛んで、キリム同様薔薇の花がモチーフとして使われます。

■アルデビル地方
イラン北部、アゼルバイジャン地方には、クルド族ほかトルコ系民族が多く、ペルシャ語が通じないこともあります。海の近くのせいか魚のモチーフも多く、その他動物や花模様もよく使われるモチーフです。シルクのキリムも多く織られます。

5、キリムの染料・染めについて


織った後、クルミの染料に浸けられたキリム
クルミには虫除けの効果もあります。

ペルシャで絨毯・キリムが発達した要因の一つに、草木染めの原料が豊富にあったということが挙げられます。イランというと、「乾燥した荒野」というイメー ジが浮かぶと思いますが、カスピ海に近い北部は日本と同じく雨の多い気候ですし、南部の温暖な地域でも農作物の栽培が盛んに行われており、おいしい果物は お隣トルコやアラブ諸国に輸出されています。ザクロ・クルミ・麦・葡萄・アカネ・藍などの自生も多くまた栽培も盛んです。イランのザクロは日本でも有名で すね。

【化学染料と草木染め】

19世紀になり、時代の流れとともに科学染料も使われるようになりはじめました。科学染料にも良質のものからそうでないものまでありますので、一概に化学染料だから良くないとは言い切れませんが、草木から採取した天然染料と化学染料を比較すれば、色の美しさ、色のもちなどやはり草木染めにはかないません。ほとんど化学染料が使われているトルコでも、近年草木染めを復興させようという動きが見られるようになりました。イランでも化学染料のものがつくられておりますが、草木染めもまだまだ健在で、廃れてしまったわけではありません。 化学染料と天然染料の違いを判断するのは、現在では結構難しいことだと思います。キリムを主要な産業としている国では、化学染料でも草木染め風に色むらをつくったり、織り上げたキリムを天日にさらして色あせさせたりするケースもあるようです。日本でも最近キリムを扱う店が多くなりましたので、いろいろなお店をめぐって多くのキリムを見て下さい。双方の違いが分かってくるはずです。

化学染料と天然染料の違いを判断するのは、現在では結構難しいことだと思います。キリムを主要な産業としている国では、化学染料でも草木染め風に色むらを つくったり、織り上げたキリムを天日にさらして色あせさせたりするケースもあるようです。日本でも最近キリムを扱う店が多くなりましたので、いろいろなお 店をめぐって多くのキリムを見て下さい。双方の違いが分かってくるはずです。

【草木染めについて】

化学染料のキリムは、色あせするとその美しさを失っていくに対し、草花や虫からとれる天然染料は、使い込むほど美しい色になると絨毯屋さんはみなそういいます。

とはいえ、草木染めのキリムも天日にさらされれば色あせします。だからといって大切にしまっておくということはしないで下さい。キリムは使ってこそ意味のあるものです。たまには敷く向きを逆にしたりすれば日のあたる方だけ色あせが目立つことが避けられます。

また、草木染めのキリムも色落ち・色移りしますので、濡れたときや洗濯の時など注意が必要です。

【草木染めに使用される植物】

  • 赤 ・・・・・アカネの根、ザクロの皮、コチニールなど
  • 青 ・・・・・インディゴ(藍)など
  • 黄 ・・・・・ピスタチオ、サフラン、レモンの木
  • 緑 ・・・・・クルミ、オリーブの葉
  • オレンジ・プラムの木の皮など
  • 茶、黒・・・茶葉、ピスタチオ、クルミの木の皮、鉄など

さまざまな植物を使って実に豊富な種類の色に染めるのですが、アカネは根の生育年数によって色の濃さが違います(年数を経るごとに濃くなる)し、インディゴは糸を染料に浸ける回数で濃淡を出したりします。

【草木染めに使用される媒介について】

キリムの色は実に多様です。特にペルシャキリムのポイントとなる色は赤色ですが、鮮やかな青色もよく使用されます。とても草木から採取したものだと信じら れないほどのはっきりとした明るい色です。草木染めじゃないのでは?と思われるかもしれません。もちろん草木のみでは、充分な色には染まりません。このよ うな色を作るのには、染を促進させる媒介を用います。木の灰汁(アク)、酢、石灰、ミョウバン、鉄、塩、根や果実の汁などいろいろ使われます。ナスのお漬 物を漬ける際にミョウバンを加えると鮮やかな紫になりますが、その要領です。このような昔の人の知恵に本当に感心させられます。

6、キリム選びのポイント

キリムの魅力の一つに、手作りのオリジナリティが挙げられるのではないでしょうか?機械で大量生産するものではないので一枚一枚が一点もので個性があります。私は、お気に入りのキリムとの出会いは、人と人との出会いと似ている様な気がします。本当に偶然見て一目ぼれして買う方、買おうかどうしようか迷っていて意を決して買おうと思ったら時間差で売れてしまっていたキリム・・、こんなのが欲しいって探している時に限って見つからない、なんとなく運命を感じませんか? キリム選びも、楽しみの一つ。じっくりとお気に入りの一枚を見つけてください。

【キリムを買おうと思ったら・・】

まず、使用する場所に合ったサイズを選びましょう。メジャーでサイズを測っておくとサイズが違ったなどという失敗を避けられます。また、キリムは縦横どの ように敷いても自由ですし、短いサイズのものを並べて敷いてランナーにしてもかまいません。使用する場所のサイズは確認しつつ、自由な発想でキリムを選ん でください。

また、事前にある程度キリムについての知識を持っておいたほうがより失敗せずに満足できる買物ができると思います。(ここをご覧の方は、だいぶ詳しくなら れたと思いますが・・。)インテリア雑誌にもキリムを使った素敵なお部屋の写真が載っていますので参考にするとよいと思います。

【キリムの品質について】

キリムの良し悪しや価格は、使用している原料・糸を染める染料・織りの丁寧さなどで決まります。

■原料となる糸

何でもそうですが、原料となる素材は重要です。イラン高原ような乾燥したところで育った羊毛は弾力があって丈夫です。これはペルシャキリムの発展要因の一つです。羊の種類や産地、糸のつむぎ方などで品質のランクは決まります。 また、使用する部位によっても違いがあります。ウールだと、羊の背中側の毛を使えば硬い手触りになりますし、お腹側の毛を使えばチクチクしない柔らかいキリムとなり、1匹の羊から取れる毛の量も少ないので値段も上がります。

■糸を染める染料

草木から採取した天然染料と科学染料を比較すれば、色の美しさ、色のもちなどやはり草木染めにはかないません。時代の流れとともに科学染料が多く使われる ようになってきており、草木染めのキリムの値段も上昇しています。科学染料にも良質のものからそうでないものまでありますので、一概に化学染料だから良く ないとは言い切れませんが、草木染めの人気の高まりとともに、化学染料のキリムを草木染めと偽って高値で売られる場合もありますので、海外で購入する場合 などは注意も必要です。

■織りの丁寧さ

上質なものは、当然ながら織りも美しいです。織目がしっかり詰まっている、糸の継ぎ目や端の処理など細かな部分も丁寧に処理されています。

【購入前にもう一度チェック!】

気に入ったキリムを購入する前に、
*遠目で見て、全体のバランスなどをチェック。
*接近して、糸が切れている部分が無いかチェック。

すれば間違いないでしょう。

7、キリムのお手入れ方法

絨毯やラグを自分で洗うという習慣がない日本では、ともすると汚れたら捨てて、新しいものに買い替えるという感覚なのではないでしょうか。しかしキリムは 自分で洗って使えるものなのです。イランのTVでは、ラグ用洗剤のCMも結構流れています。みんな絨毯やラグは家庭で洗うのです。

【普段のお手入れは】

■普段の掃除はとても簡単。棒などで叩くか、掃除機でほこりやゴミを吸い取ってください。また、湿気を嫌いますので時々干して風に当てると良いです。

■キリムは、草木染めでも色落ちしますので、ひどく濡れるなどした場合に色にじみや他のものに色移りすることがありますので注意しましょう。

■水に濡れた時はすぐに乾いた布などで十分に水気を取り除きます。またコーヒーや飲み物などをこぼした時は、すぐに汚れの上に塩をかぶせて水分を吸わせま す。乾いた布でその塩を取り除いたら、濡れた布で叩き拭きし、仕上げに乾いた布でトントンと水分を取ります。可能であれば、すぐ水洗いすればよりいいで しょう。